読みもの 04 外
暗くなる前に、角を一つ
十一月の日は、夕食の支度とほぼ同じ速さで傾きます。遠くへ歩く計画は、立冬の手帖には入れません。家の角を一つ曲がって、戻る。十五分あれば足ります。それより短い夜があっても、失敗ではありません。
見るものは、小さくていい
自販機の光、自転車のカゴ、取り込んだあとの布団の跡。金木犀の香りは、多くの土地でもう終わりです。椿の蕾は、まだ固い。吐く息が白いかどうかは、その日の気温に任せます。白くなくても、暦のうえでは冬の入口にいます。
靴は、いつものものでいい。新しい運動をこの夜に始めない。早足もしない。鍵の場所だけ確かめて、出ます。
戻ってからが、半分
暗くなってから初めて外へ出るより、明るいうちに一度、外の空気の温度を肌で見ておく。戻ったら照明を一段落とす。落とすのは散歩の続きです。家の中の明るさが、外の暗さに対して強すぎないようにするためです。
雨なら、角まで行かなくていい。玄関を開けて、空気を入れて、閉める。それも、立冬の歩き方に数えます。
体調が優れない夜は、布団を優先してください。この文章は、歩くことを目標にしません。外の空気を一度知るか、知らずに夜を終えるか。その選択が残っていれば十分です。
了